爾光尊事件 高野圭介 |
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終戦間も無い頃に突然「私は天照大神の再来である」と言い出した女がいた。 金沢市で爾宇教を開いた教祖爾光尊こと長岡良子。 彼女はかなりの妄想にとりつかれていたようだ。 「いまに日本には天変地異が起こる。だが、爾宇教の信者だけは助かる。 私たちはその時、新国家をつくるのだ」と説いていた。 |
戦後はこの種の新興宗教が数多く生まれたのだが、 なぜかこの爾宇教には有名人や企業の社長などの信者が多かった。 そしてその中に、 囲碁の天才・呉清源や69連勝の大記録を残した大横綱双葉山がいた。 長岡良子は新国家誕生のときの内閣のメンバーまで決めていて、 まず元首は彼女自信、双葉山は体育大臣を命じられていたようだ。 |
昭和22年1月、 長岡良子を連行しようとする警官隊の前に立ちはだかった双葉山は、 彼女を守ろうと警官を片っ端から投げ飛ばして、彼自身も捕まってしまった。 呉清源夫妻は彼の求める真理と爾宇教の教えが違ったものであると知って、 去っていった。 しかし、 長岡良子は精神鑑定の結果、妄想性痴呆症と診断されて釈放してしまった。 |